当事者の声を紹介。「アクセシブルルーム」に健常者が泊まる弊害と対策は

ライター:

東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル2022年4月に華々しくオープンした「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリー(R)ホテル」。

その名の通り、映画のキャラやモチーフがちりばめられた可愛らしいホテルは現在予約が困難。

そんな中、ハンディキャップを持った方向けの部屋「アクセシブルルーム」に健常者が宿泊する事について色々考えてみました。

誰もが楽しめるように配慮されたホテル

東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテルまず、大前提として近年のホテルはどんなホテルにもほぼハンディキャップをお持ちの方向けの部屋があります。

もちろんこれは東京ディズニーリゾートの各ホテルも例外ではありません。そうした方向けのお部屋はホテルによって名称が異なりますが、「バリアフリールーム」や「アクセシブルルーム」と名称がついています。

これらの部屋について、宿泊された健常者の方がネット上でそうした方向けの部屋ではなく、「広くて豪華な部屋」と表現をされた事で、色々と話題になりました。

そもそもアクセシブルルームってどんなもの?

アクセシブルルーム

アンバサダーホテルのアクセシブルルーム(画像は公式より引用)

まず、アクセシブルルーム(Accessible Room)は、車椅子などの方が部屋を利用しやすいように考えて作られた部屋の事です。

バリアフリーで段差がない、部屋の入り口が広く、手すりがあったり段差が無い、ベッドが低めになっている…などの特徴があります。

アクセシブルルーム

ホテルミラコスタのアクセシブルルーム(画像は公式より引用)

また、バスルームやトイレも広く、シャワーや浴槽が使いやすいといった特徴があります。

例えば上の写真はホテルミラコスタのアクセシブルルーム。下の写真は通常のスーペリアルームの写真ですが、ベッドの高さが若干低くなっているのがわかります。(真ん中の電話の台で比較するとわかりやすいです。)

アクセシブルルーム

もちろんこれらの配慮は健常者とっては何でもない事ですが、車椅子を使われている方にとっては重要な部分。

そうしたユーザーに配慮して、使いやすさが重視された、いわば「特別な部屋」なのです。

健常者が泊まる事がダメな事ではない

トイ・ストーリーホテルのアクセシブルルーム

様々なハンディキャップを持った方のために作られたこうした部屋。

しかし、そうした部屋だからといって「健常者の方が泊まってはいけない」と言う事はありません。

むしろ、ホテル側とすれば、利用希望者がある場合は問題なければ貸し出すのが一般的と言えます。

アクセシブルルーム

トイ・ストーリーホテルのアクセシブルルーム

しかし、人気のディズニーホテルは予約が困難な所が多く、更にこうした特別な部屋を希望される方は他の健常者の方に比べ、かなりの労力が必要です。

原則的には誰でも使える部屋ではありますが、その部屋を「豪華で広い部屋だから」といった理由で健常者が積極的に使うのは「全く問題がないとは言えない」と言う気もします。

誰でも予約可能な仕組みに課題

トイ・ストーリーホテルのアクセシブルルーム

こうした事は常に満室になるようなホテルでなければ、大きな問題ではないと言えます。

しかし、人気が高く、なかなか予約が取りにくいディズニーホテルではそうした事情も大きく変わってきます。

まず、全体の客室数に対し、こうした部屋は元々の数が少なく、予約が難しいトイ・ストーリーホテルの中では更に予約困難です。

トイ・ストーリーホテルのアクセシブルルーム

それらを考えると、こうした「アクセシブルルームでないと宿泊が難しい方が優先的に予約できる制度」があるのが理想と言えると思います。

現状では同部屋の予約はネットからのみになっており、例えハンディキャップをお持ちの方でも、優先的に案内されることは無く、自力で予約するか、粘り強くキャンセル待ちするしかないとなっています。

ここで今後の課題なのは、この部屋が健常者・障がい者の区別なく、誰でも予約できてしまうと言う事。

他のホテルによっては、障がいをお持ちの方でないと予約ができない部屋もありますが、現在の仕組みでは、ここが考慮されない限り、今後もこのような事は起こり得ると言ってもいいと思います。

「あるご家族」からの手紙

(プライベートな情報が含まれている為、加工しています)

そんな中、筆者はある方から、上のような手紙の写真を頂きました。

こちらはトイ・ストーリーホテルに泊まった時に、非常によくしていただいて、その感謝の言葉を述べた手紙です。

手紙の内容要約

そして、そこには、ご自身がなかなか予約が取れない状態だった所に、健常者の方が予約した事をネットで見かけて、がっかりした…と言う主旨のお話が書かれていました。

健常者の方はどの部屋でも全く問題なく利用できますが、障がいを持った方はこうした部屋でないと通常通りの利用がなかなかできません。

そう考えると、やはり「健常者の方があえてハンディキャップルームを使うのは適切であるとは言えない」と考えられると思います。

一律に利用制限ができない難しさも

ディズニーパワハラ裁判以上の事から、例えば「予約する際には障害者手帳の提示が必要」と、いった形にすればある程度の制限はつける事ができます。

ただ、ここで気をつけなければならないのは、そうした障がいなどをお持ちの方は、「必ずしも障害者手帳を持っている方だけではない」と言う事。

また、障がいと言うレベルでは無いものの、足腰の悪い方や、怪我や病気で通常の生活が困難な方、ご高齢の方、見た目ではわからない心の病をお持ちの方…など、その制限を一律にする事が実質的にできません。

更にそうした確認が必要となると、ホテル側も確認が困難になり、結局本来の利用者が使いにくくなる、と言った所も難しい所です。

必要なのは「思いやりの気持ち」

東京ディズニーリゾート以上の事から、これは非常に難しい問題であるとも言えます。

具体的で明確な解決策と言うのは無いのかもしれません。

しかし、先程の手紙にも書かれている通り、例えば障がいの程度判断は難しいものの、ハンディキャップをお持ちの方は「受付開始の日数を一般の人に比べて早める」と言う方法や、「電話予約のみの受付」で、障害者手帳等の明確な基準ではないものの、利用する方の状況を説明、報告する形ができれば少しでも本当に必要な方が予約しやすくなるかもしれません。

現実的には難しい話だとは思いますが、今後こうした部分が考慮されて行くと良いですね。

東京ディズニーシーただ、一番大切なのは、健常者の方が必要性も無く、「豪華」や「広いから」、またはSNS時代らしさではありますが、ネット上での自己アピールや、いわゆる「ネタ」として利用するのをやめる事。

本来こうした事は当たり前で、言うまでもない事なのですが、そうした方々のための部屋と言う認識をしっかり持つ事。

そして理屈ではなく、「思いやり」と「良識」を持って利用する事以外は無いのかもしれません。

…誰でも平等に楽しめるパークやホテルと言いつつも、やはり健常者の方に比べてハンディキャップを持ちの方は、できる事や時間や費用もかかります。

楽しみたい気持ちはみんな同じ。色々な方の為に、誰もが思いやりの気持ちや優しい思いを持ったパークやホテルになると良いですよね。

本記事のトイ・ストーリーホテル内部の写真は情報をお寄せ頂いた方からご提供頂きました。また、記事内で紹介した一部の画像はURTRIP様の記事でも掲載されています。今回、この件を広く知ってただだくことを目的に事前に相談の上、同一の写真を掲載しています。

ABOUTこの記事を書いた人

DヲタのWEBライター。TDRハックの他に、 個人ブログ「TDRな生活」や「株式会社ぴあ」の「ディズニー特集 -ウレぴあ総研」で多くのTDRにまつわる記事を執筆。7冊のディズニー関連書籍の著者でもある。近著に「ひとりディズニー50の楽しみ方」 (サンクチュアリ出版 )。…慌てず急がず、ゆっくりゆったりとパークを散策しながらお酒を楽しむのが好きです。

12 件のコメント

  • 障害のある方が優先になって欲しい気持ちは同じです。ただ車椅子に乗っているんだから私達を優先しては同意できません。障害にもいろいろあります。うちの子供は軽度脳性麻痺です。車椅子を使うほどではありません。見た目だけでは健常児に見えるのでしょう。ランドの多目的トイレを使ってトイレの介助をして出て来たところでキャストの方にここは車椅子専用だと言われてしまいました。一般の狭いトイレに2人入っての介助は無理があります。もちろんヘルプカードは皆にわかってもらいたいと思い胸につけていました。パークで歩き疲れたあとはふらついてしまうので部屋が広いとありがたいです。お風呂だって介助が必要だから広いとありがたいです。
    よくパークへ行く車椅子に乗っている友達は、車椅子用の席で並ばずに家族でショーを観てると自慢してきます。しかしうちは車椅子ではないのでもちろんショーが観たいなら場所とりをして長い時間待つか少し離れた所から立ってみるかしかありません。本当に困っている時は助け合いの精神でもちろん助け合うべきですが、目に見えている物だけが全てではなく見えていないところで助けを必要としている人がいるということも忘れないで下さい。今回の件は運営が誰でも予約をとれるようにしているのだから誰が予約をとった所で文句は言えないのではないのでしょうか。いくら健常者だけでも4人で28㎡(ベイビュー)の部屋はせまいですよ。

  • ディズニーホテル宿泊者は、ホテルレストラン予約はビジターよりも1ヶ月早く予約出来ます。
    アクセシブルは、障害者手帳欄にチェックを入れるようにし!また、スマホチェックインは不可能にして、フロント、又は、ウェルカムセンターにて障害者手帳の提示義務とすることで解決出来るかも知れません。しかし、中には嘘つきも居るかもしれませんから、折角家族で来たのに入室出来ないのかよ❗とトラブルになるかも知れませんので、ホテル側から、必ず予約本人に電話を入れて確認すると良いかも知れません。本人との会話録音も大事ですね。
    しかし、ホテルも稼働の問題を抱えるのですから、5部屋の内の1部屋を残して3日前から、健常者解放として受け付けるのも良いかと思います。

  • 高次機能障害で右半身麻痺で一人では歩けず、24時間介護が必要な父がいます。
    車椅子は自分では動かせません。
    介護している母にとっても、ディズニーが好きな両親にとって、ディズニーリゾートは息抜きの場です。
    ですからアクセシブルルームは生きるうえで必要です。
    障がい者手帳がなくてもバリアフリーで広いお部屋が絶対に必要な方って、具体的にどんな方なんでしょうね?
    予約に障がい者手帳が必要になっても、私はいいと思ったのですが、困る方がいるのであれば変えることはできませんね。
    DASだって手帳必要になったし、いいと思ったんですけど。

    • 勿論当日空いていれば、お部屋のグレードアップで、手帳のない方にも利用いただければいいと思います。
      逆に、予約されていても、当日問い合わせのあった、手帳を持った方に譲っていただける仕組みがあれば、それでもいいし。

      • 当日空いていればグレードアップで使わせてもらえるって、皆広い方の部屋がいいと思うのですがそれは一番最初にチェックインした人が権利を獲得できるのですか?その場合、たまたま全室障害者の方が予約していなければグレードアップした人が泊まるはずだった部屋が空室になってしまいませんか?

  • 障がいをお持ちのご本人様、ご家族様で「ディズニーに行きたい」とお考えの方のご意見をお伺いしたく、アンケートへのご協力を宜しくお願い致します。

    https://forms.gle/1odius3A4CiJWFbv9

    回答にかかる時間の目安は約2分間です。

    アンケート結果はご本人が分からないような形で統計データとして使わせていただく可能性があります。
    また、今回の目的以外には一切使用しませんので、ご協力宜しくお願い致します。

  • 一般的なホテルの場合はどうしてるんでしょう。
    ホテルの予約サイトなどで、アクセシブルルームと記載してあるのはあまり見た記憶がありません。でもあるところにはあるんでしょう。
    他のホテルでも満室になる時期はあるはずです。それでも数室、緊急対応用に開けていると聞いたことがあります。

    たとえはアクセシブルルームを、予約は限定にして緊急時用の空きにする、ということはできないものでしょうか。部屋数にもよるんでしょうが、普通の人はたまたま空いてて部屋変更されたらラッキーではダメなんでしょうか。
    電話の予約受けを始めるとパンクするのはわかってますが、一度通常ルームを予約してから希望対象者は変更依頼をする、ならギリギリできるのでは。
    兎にも角にも、ディズニー系ホテルの人気度が高すぎるのが解決すればいいんですけどね。周辺ホテルもとても滞在しやすいのでアーリーがそちらも対象になればもう少し良くなるような気はします。

  • 何日前まではそうした方を優先的にして、空きあるならば直前に開放とかでもいいかと思います。
    ホテルとしてはその部屋をずっと空きっぱなしにするよりは、満室の方がいいわけで
    でも、豪華で広い部屋だからという理由で押さえられていざ必要な人が泊まりたい時に泊まれないのはおかしいし

    難しい問題ですね
    ちゃんとした枠組みを作れるかどうかが今後の鍵ですね

  • 初めまして。ブログを拝見して。私もディズニーが大好きな、障害者手帳所有者ですが、ディズニーホテルのアクセシブルルームに、健常者の方が泊まるとは、本当に非常識ですよね。こういうことが続くともう、ホテル側だって、パーク内の入場チケットの障害者割引や、ディスアビリティアクセスサービス(略してダス:通常の乗り物の列に、並ぶことができない障害がある方で、尚且つ来園当日に障害者手帳を、係員に提示した方限定の制度。登録にはその場での写真撮影がある。それに登録をしていると、本来乗り物等の列に、並ぶべきはずの待ち時間を、乗り物以外の別の場所で、待機が可能という配慮が受けられる。この場合は同伴者5名まで可能)みたいに、そのルーム予約時並びに、チェックイン時には、障害者手帳等の提示を、対象ゲストに求めざるを得なくなってしまいますよね。そうならないためにも、ゲスト1人1人が、相手に対する思いやりを、常に持つことが、大切だと思います。

    • 自分も足に障害があるんですが、健康な人が泊まっても非常識だとは思いません。実際健康な人でも泊まれるわけですし、その人たちだってあまり取れない予約を一生懸命探して取ったので楽しむべきだと思います。そのようなあなたの意見を広めないでほしい

  • 結局この手の話は、ざっくり分けて2種類の人に分けられてしまうのではないでしょうか?
    それは他人のことを考えられる人と自分のことを中心に考えがちな人なのかじゃないかと。

    これが端的な人であればあるほど、お互いの意見は相容れないでしょうから、意見を言うことは大事だと思いますが熱くなりすぎるのもストレスになるだけのような気がします…

    でもOLCには何らかの対策を打ってほしいですよね。

  • 私も4月にアクセシブルルームをたまたまキャンセルで拾えて、家族四人で泊まらせてもらいました。下の子が肢体不自由の子で子供用車椅子なので、広い入り口や、広いお風呂、ウォーターサーバーが部屋を出てすぐ、等とても過ごしやすいお部屋で感動しました!!
    また行きたい!!と子供が言っており、再度あのお部屋の予約を試みるも、アクセシブルルームはとれずスタンダードしかとれませんでした。電話でホテルへアクセシブルルームへの変更可能か問い合わせても、こちらでは予約変更出来ないのでネット空きをちょくちょく見てもらうしか、との回答でした。なんだか残念でした。。

    ほんと、記載のあったように何か確認をホテル側でしてもらうようになれば良いな、そしてみんなが思いやりをもってほんとに必要な人に泊まってもらえる部屋になればいいなと思いました。貴重な記事を書いていただきありがとうございました!

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