様々な物語や細かなプロップス(小物)でも私たちを楽しませてくれる東京ディズニーリゾート。
この細かなこだわりは非常に広く、多岐にわたっているのですが、気づかぬうちに「パークが意図した魔法」にかけられて誘導されている事もあります。
この「魔法」は知らず知らずのうちに、かけられた事も気がつかない…という細かなものも…。今回はそんなところをご紹介します。
この記事のもくじ
それは簡単に言ってしまうと「視線の誘導」
知らぬ間にかけられた「魔法」。ちょっと大げさな言い方ですが、それは簡単に言ってしまうと「視線の誘導」。
「…え?何のこと?」と思うかもしれませんが、これは私たち「ゲストの視線を意図的に誘導」し、「見せたい物を見せる」と同時に「見せたくないものを隠す」という方法の事です。
もちろん、実際に「そちらの方向に注目してもらいたいための誘導」の場合もありますが、多くの場合は、逆に「見られたくない位置や方向を隠すため、意図的にゲストの視線をそちらに向けている」という場面が多くあるのです。
一番わかりやすい例として挙げられるのは、ディズニーランドのウエスタンリバー鉄道です。このアトラクションの何がこだわりなのか、さっそくお伝えしていきます。
自然に任意の方向を向かせるテクニック
こちらのアトラクションは、列車に乗って出発し、しばらくすると進行方向右側に、実際には列車が止まらない「スティルウォータージャンクション」という駅があります。
この駅は西部の開拓者たちが、更にここから西へと向かうため、ここで蒸気船や馬車に乗り換えたと言う場所。
ウエスタンランドの背景に合った設定ですよね。
この列車が停まらない駅ですが、実はディズニーランドの開園当初からあったわけでなく、1990年の夏に新設されている駅なのです。
今からもう30年以上も前になるので、覚えていらっしゃる方は少ないでしょうね。
この駅ですが、もちろんアトラクションのストーリーを補足するためのものでもありますが、もう一つの重要な役割があります。
それは、駅の反対側、左側(ゲストが見ている反対側)にある「あるものを隠す役割」を持っているのです。
実は反対側を見せないテクニックだった

この進行方向右側にある駅ですが、列車内のアナウンスで誰もが自然にそちら側を見てしまいますよね。この時、注目いただきたいのは実は「反対側」。
ここには「管理用通路やカーブミラー」があるのです。いうまでもなく、ここは西部開拓時代。そんなところにある、不似合いなカーブミラーは極力見せたくないもの。
こうして、「ただ単に見せたくないものを隠す」だけでなく、「ゲストの視線をコントロール」して、現実世界を見せないようにするテクニックは、さすがディズニー!と思わせてくれますよね。
しかもこのカーブミラー、街中では、普通は安全対策のために目立つ黄色になっていることがほとんどですが、あえてその存在を目立たなくさせるために、植栽と同じ、緑色に塗られてるのです。

ちなみに、この上の写真は、ディズニーリゾートラインの上から風景。カーブミラーがある道路を見ることができます。
画像の中央、やや右側に少しだけ写っている建物が、このスティルウォータージャンクション。
こうして知らず知らずのうちに、小さな「魔法」にかけられている事がパーク尾中ではたくさんあるのですね。
次回行かれた時はぜひ反対側も見て…いや、本当は見ない方がアトラクションの世界に入り込めるんですけどね。
その存在さえも感じさせない「小さな魔法」
そんなこのウエスタンリバー鉄道ですが、こだわりはそれだけではありません。
駅を出発し、ご紹介した「スティルウォータージャンクション」を超えると、進行方向の右側にはインディアンの集落が見えてきます。
列車内のアナウンスとともにインディアンの暮らしについての説明が流れます。
その先には川沿いにあるトムソーや島が見え、ゲストの皆さんは進行方向右側をしばらく見ていることになります。

そんな中、しばらく行くと、右側には「プレーリードッグ」のかわいらしい姿が見えます。
このリスのような小さな動物は当時の西部ではあちこちで見かけることができたそうです。
かわいらしいこの姿ですが、これも実は意味があるのです。
この時、反対の左側には、閉園後にウエスタンリバー鉄道の列車がしまわれる「格納倉庫への引き込み線路」があるのです。
上の写真はその周辺を図解したもの。御覧の通り、この引き込み線は左側にあり、「その存在を極力ゲストに見させないためのもの」であることがわかります。
実際はこれを知ったところで何かゲストに得があるわけではありません。しかしながら、その世界観を大切にする東京ディズニーリゾート。
こうした現実を感じてしまうようなものをできるだけ隠したりするだけでなく、意図的にゲストの視線をコントロールして、「その存在さえも感じさせない配慮」は素晴らしいですよね。
こうして、「見せたいものをうまくi見せる」だけでなく、「隠したいものをその存在さえも感じさせない」という、パークのこだわり。
こうしたこだわりはパークの中にまだまだたくさん隠れています。ぜひ皆さんも(パークの意思とは真逆になってしまいますが)探してみてくださいね。