
東京ディズニーシー15周年アニバーサリーが2017年3月17日で終了となりました。華々しく最後を迎えましたが、最終日の混雑などについて、いろいろな課題や問題も浮き彫りとなりました。
それはパークに事前に入ることができる「アーリーエントリー」について。
本来はホテル宿泊者の付加価値であるはずのサービスが、近年は「ショーの場所取りのためのツール」として利用されているのです。
さらに不正アーリーエントリーが横行という現実も。現在ディズニーリゾートが抱えていると言える、アーリーエントリーの様々な弊害・トラブルについて解説します。
この記事のもくじ
そもそもアーリーエントリーって何?

ディズニーホテル(以下、Dホテル)宿泊者は通常開園時間より15分先にパーク内に入れる、通称、アーリーエントリー(正式名称「ハッピー15エントリー」公式サイトの案内はこちら。)と言うサービスがあります。
他のオフィシャルホテルやグッドネイバーホテルと比べ、ほぼ直営で単価の高い公式ディズニーホテルと言うこともあり、他のホテルにはない付加価値として、魅力の高いサービスです。
混雑するアトラクションも一般入園のゲストよりも早めにファストパスが取れたり(発券開始は開園時刻から)、開園時刻前からアトラクション体験ができるメリットは非常に大きいです。
アーリーエントリー、今何が問題になっている?

近年では、この15分早く入れる特典「アーリーエントリー」が、「ショー観覧の良い場所を確保するためのツール」となる傾向が強くなりました。
ミラコスタに宿泊者なのに、ホテルには泊まらずに、深夜から朝までアーリーの列に待機という事態も発生しています。
また、ディズニー側で明確に禁止としている様々な行為が目立つように。
以下、問題行為のリストです。
・アーリーチケットを転売する
・数日前からの徹夜待機
・開園直後のダッシュ行為
・割り込み
特にイベント最終日等には関連した問題が多く発生しています。
アーリーエントリーの対象者が急増した理由、そしてその結果…

これまでは3つのDホテル(アンバサダー、ミラコスタ、ランドホテル)だけの特典だったこのアーリーですが、2016年にオープンした第4番目のDホテル、「東京ディズニーセレブレーションホテル」もこのサービスの対象となり、対象者数が一気に増えました。
今回の周年行事の最終日や、イベント・ショー最終日などは、多くのゲストがこのアーリー特典を利用しますが、今回は周年行事の最終日に加えて、人気のレギュラーショー「テーブル・イズ・ウェイティング」も同日に終了だったため、更に混雑に拍車がかかった形になりました。

そのため、アーリーエントリーで入場したゲストだけで、メインショーの観覧場所や、先着順で配布されたテーブル~の整理券がほぼ終了してしまった…という状況になりました。
本来はホテル宿泊者のため、「長時間並ばずに早めに入れる」と言う主旨である特典なのに、そのキャパシティーを超えてゲストを入園させた事により、混乱が生じてしまったと言っても過言ではないと思います。
また、比較的安価なセレブホテルの利用で、これまでのDホテルの特典だったアーリーチケットが入手できるため、これまでよりも更に混雑してしまった面もあると思います。

東京ディズニーセレブレーションホテルはウイッシュ・ディスカバーの2つのホテル棟から成っています。部屋数は352室+350室で、仮に4名で泊まったとすると、2,808名。
わかりやすい例で例えると、ビックバンドビートが開催されている「ブロードウェイ・ミュージックシアター」の定員が約1,500名なので、「シアター満員が二回分増えた」というイメージに近いと思います。
え、こんなに?混雑日のアーリー利用者の人数
では、具体的にアーリー利用者はどれくらいいるのか、Dホテルの客室数を元にざっと算出してみました。利用人数は部屋によって異なりますが、単純計算で最大値の「客室数×4名(添い寝可能も含む)」で計算。
502室×4=2,008名
■アンバサダーホテル
504室×4=2,016名
■東京ディズニーランドホテル
705室×4=2,820名
■東京ディズニーセレブレーションホテル
(ウイッシュ・ディスカバーの2つ)
352室+350室×4=2,808名
上記4ホテル合計で、9,652名。これを2パークで割ると4,826名。…しかし、全員がアーリーを使わないと仮定して、「全体の約7割だと3,378名」、「約6割だと2,895名」となり、ざっと約3,000名前後は混雑日のアーリーで入園するのではないかと想定されます。
これを見ると、数値上はかなり多くのゲストが一般ゲストよりも先に入園可能という事になります。通常時期であればそれほど問題にはならないと思われますが、これはキャパオーバーではないかとも思われます。
現在のサービスを変える事は現実的になかなか難しいとは思いますが、今後はゲストが集中する日は制度の見直しや変更も含めて再考する必要があるのかもしれませんね。

特典利用の抜け穴をつく不正アーリー。対策はほぼ不可能?

ディズニーホテルの場合、基本的に宿泊代表者を登録しておけば、それ以外の宿泊者については本人確認をすることを行っていません。
アーリーを使うためには、チェックイン時にもらう通行証が必要なのですが、ここには対象日などの記載があるだけで氏名や部屋番号等の記載はありません。
そのため、実際に宿泊していない人でもその権利を使うのは容易です。要はこのあたりのチェックを厳しくすればそれを防ぐ事ができると思われます。
ただ、宿泊者名簿に記載の人物と、当日宿泊する人間が本当に同一人物かどうかを現場で細かく確認するのは現実的に無理と言えるでしょう。
また、今回の様に一時的に想像を超える集客がある日以外の通常時期には、大きな問題になっていない所も対策がし難いという現状があるのでしょうね。
問題解決にはどうしたらいいのか?
問題の根本的な解決には課題が多く、そう簡単に効果的な予防策を講じるのは、正直申し上げてかなり難しいと言えるでしょう。
ただ、今後も同様の混乱は起きると思われます。そう考えると、以下の方策が考えられます。
・宿泊者本人と同室者かどうかの確認を徹底する。
または、
・入場順番を抽選で決定する。
それが難しいようであれば、「最終日等の人気が確実に集中する観覧場所は抽選にする」という以外の方法はないと思います。
これは本来であれば、言うまでもなく利用者のモラルやマナーに頼る部分が大きいと思いますが、徹夜は禁止となっているにもかかわらず、必ず徹夜する方が出てくる事や、基本的に場所取りは先着順であるという事が解消されなければ、根本的な解決にはならないと考えられます。
「抽選によるショーの観覧場所」については賛否両論あります。
ただ、現在の状況では、「普通にパークを訪れた一般のゲスト」がメインショーを実質的に観覧することが「ほぼ無理」と言う状態はパーク運営の立場から考えれば改善すべき部分であると思います。
具体的に多くの問題・課題があり、誰もが100%納得できる形は難しいと思いますが、これまでの様に「並べば見られる場所」と「抽選などで見られる場所」を分ける様な形が理想に近いのかな、と思う部分はあります。
皆さんのお互いの笑顔の為に…。

こうした現在のディズニーリゾートの状況は、禁止としながらも、「数日前からの徹夜」や「アーリー券の不適切な使用や転売」、「途中での列の割り込みや合流」等の様々な問題を制度的に完全に解消できずに、「実質黙認」している様な印象も完全には拭えません。
近年はこうした特異日だけでなく、通常の週末でも、「ミラコスタ宿泊の方でさえ、ホテルの部屋で眠るのではなく、深夜からアーリーの場所取りをしている」と言うのが当たり前の状況でもあります。
もちろんこれは運営側に全ての責任があるわけではなく、利用者のモラルやマナーに頼る部分が大きいと思います。
ただ、制度的に現在の形は悪循環が悪循環を呼ぶような形になっているのも事実だと思います。いずれにせよ、完全なる解決は難しいとは思いますが、様々な需要に対応するためには、複数の選択肢(抽選と待てるエリアの併用)などが現実的な解決策という事なのかもしれません。
本来であれば、譲り合ってみんなでお互いに楽しみたいディズニーリゾート。ルールや決まり事をお互いに守って、周りへの気遣いとともに一緒にその雰囲気を楽しみたいものですね。
東京ディズニーリゾートの当日のイベントプログラム等が印刷されている「TODAY(トゥデイ)」。ここには「皆さんの笑顔の為に」と言う言葉と注意事項とともに、周りの方と譲り合って…と言う言葉が記載されています。
もちろんできればいい場所で見て、いい写真を撮りたいと思うのは当然ですが、その同じ気持ちを持った自分と同じ、たくさんの方がいるという事も考えながら、自分もパークを作っている一部である事を大切にしたいものですね。