
「夢と魔法の王国」そして「冒険とイマジネーションの海へ」と、それぞれテーマがある東京ディズニーランドとシー。
私たちはパークにいつもとは違う「非現実」や「夢や冒険の世界」を求めてやってきます。
そんな中で生じる近年の環境問題。企業の姿勢として取り組むべきところはありますが、果たしてディズニーリゾートとしてそのバランスはどうあるべきか?について考えます。
この記事のもくじ
「特別な場所」である東京ディズニーリゾート
まず、私たちが東京ディズニーリゾートに求めるのは、「非現実的な空間」であり、普段は味わえない体験価値。
ディズニー映画の世界を体験できるアトラクションやショー、こだわりのある建物や風景、夢や想像力、空想にファンタジー…。そんな全く異なる世界観を期待しながら来園します。
普段何かと厳しい現実社会で生きる私達は、やはりそうした「特別感」を求め、言い換えれば味わいたいのは「ディズニーらしい非日常の世界」。
パスポート代を払ってまで、普段と変わらぬ「現実感」は味わいたくない…と言った考え方もあると言えます。
そんな中、オリエンタルランドからは下記の発表がありました。
使い捨てプラスチック容器包装の削減推進

(画像はオリエンタルランド公式サイトより引用)
近年、企業として求められる「環境への配慮」。オリエンタルランドは「レストラン施設のプラスチック製のカトラリーなどに対する取り組み」として、ご覧の発表を行いました。
OLCトピックスを掲載しました。
東京ディズニーランドおよび東京ディズニーシーにおける、レストラン施設のプラスチック製のカトラリーなどに対する取り組みを進めます。https://t.co/hRGAcSFAMc— 株式会社オリエンタルランド (@OLCGROUP) May 18, 2022
リンク先の内容(要約)は下記の通り。
今後、両パーク提供のプラスチック製のカトラリー(フォーク・スプーン・ナイフ)、ストローやマドラーなどは以下の通り変更。
①プラスチック製のカトラリーは一定量のバイオマス含有または軽量化したカトラリーを導入。プラスチック使用量を削減。
②プラスチック製のマドラーを非プラスチック製へと変更。
③一部カトラリーはプラスチック製の袋入りで提供していたが、衛生要件を満たすものについては袋無しにて提供。
④ストローは2019年(3月)より紙ストローへ変更済み。また、一部店舗ではストローを使用しないリッドへの切り替え実施。
各施設やアイテムごとに準備が整い次第、順次変更予定
現代では企業だけでなく、個人としても積極的に取り組んで行かなくてはならない環境への配慮。
「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」やエコ素材を用いて自然環境保護に向けた取り組みなど、これはご承知の通り、世界的な流れでもあります。
SDGsは「持続可能な開発目標」でもあり、短期で効果を求めるのでは無く、継続して行う必要もあります。

アイスコーヒーのマドラーは木製に
環境保護に対して、社会的・国際的な要請や地球や環境のために私たちもできる事は行っていかなければなりません。
しかし、気になるのは、そればかりを重視した場合、パークはこれまでとは違う「現実的な世界」となっていきます。
パークとして何を重要視すべきか?
近年パーク内で進む、様々なものに対する変化。例えば、パーク内のレストランの食器は現在は「使い捨ての紙皿」が増えてきています。
こちらの記事、「【紙皿問題】こんなに変わった!こだわりのディズニーランド&シーの食器」では、そんな過去の変化を写真で紹介していますのでよろしければこちらもご覧ください。
さらに前述の通り、パーク運営するオリエンタルランドは、今後プラスチック削減のために色々な変化をしていくと言う事が発表されています。

こだわりの食器→白い皿→紙皿へ
もちろんこれらは環境に対する配慮としては非常に素晴らしいこと。東京ディズニーリゾートに限らず、「社会全体の要請」とも言えます。
しかし、正直に言うと、近年のパークはそれを理由に「パークの価値まで削ろうとしているのでは」と感じる部分もあります。
プラスチックは削減するけどゴミは増える?
そんな中、気になるデータがあります。こちらはオリエンタルランドが発表した、廃棄物管理に関する目標。
こちらによると、ゴミの排出量がご覧のように2020年から一気に増えています。これは下段の注釈では「安全確保のために分別を中止した」ことや「コロナによる廃材が増えた」と記載があります。
確かにこれまではリサイクルのためにゴミを分別していたものをコロナ感染予防の観点からそのまま捨てたものと考えられます。
しかし総量は変わらないはずですし、そもそもコロナによる人数制限運営をしており、レストランやフードワゴンもかなりクローズしていた時期もあります。
更に「除菌清掃素材が増えた」との記載もありますが、正直ここにも疑問があります。
まず、分別しない事でゴミが増えたのは事実な部分もあると思いますが、これは明らかに「使い捨ての紙皿を増やした事による増加」だと思われます。
また、消毒などによる廃材が増えたというのは、消毒容器やそれらの廃材と思われますが、「ゲスト一人あたりの排出量に換算する」のは無理があるように思えます。
これらを見ると本当に環境への配慮と言えるのか疑問に感じる部分もあります。
「環境保護」の名のもとに経費削減?

TDR35周年の頃(2018年)のザンビーニの食器類
こうした環境への配慮などは時代の変化や要請に併せて従うのは当たり前の事でもあります。
しかしここであえて言わせていただきたいのは、近年のパークは「環境への保護」や意識の高まりを理由にして「単にコストを削減している」のではないか?と感じる部分。
一ゲストとして勝手な事を承知で言わせて頂くならば、「非現実の世界」であるテーマパークとしては、もう少し工夫もして欲しい…と思える部分が多くあります。

現在(2022年)のザンビーニの食器類
例えば、この紙皿についてもこれはもちろん感染予防の観点からも、肯定される方も多いと思います。
しかし、現在の紙皿などに変更になったタイミングは、コロナウィルスには関係ない時期からです。また、まだ今ほどサスティナブルやSDGsの考え方への認知度は低い時期。
これまでは写真でご紹介してきたように、これまでは様々なテーマエリアやレストランで「テーマに合わせた食器」を使い、ゲストの体験価値を高めていました。

以前はお皿で提供されていたニューヨーク・デリのサラダ
しかしながら、近年は「両パーク統一の個性のないデザイン」の紙皿や紙コップが使用され、特別感やこだわりは全く感じられなくなりました。
これまでは例えば「ザンビーニ・ブラザーズ・リストランテ」では、グラタンなどは「鉄の食器」が使われ、見た目や保温性も優れていました。パスタもプラスチック製ではありますが、デザインの凝ったお皿が使われてきました。

ビールも現在はプラスチックコップから紙製に変更
また、「ユカタン・ベースキャンプ・グリル」では「発掘現場のベースキャンプ」の設定のもとに、あえて「無機質な鉄の皿」や、現場の雰囲気に合わせた「青いお皿」や「マグカップで提供されるスープ」などがありました。
こうしたものはパークの雰囲気やそのエリアなどの物語のリアル感を演出するのに非常に役立っており、「ゲストの特別な体験価値を押し上げていた」と言う一面もあります。
「デザインの工夫」で環境への配慮は可能

以前はそこだけのオリジナルデザインなどが多く存在していた事も
こうした部分は「環境への配慮」と考えて紙皿にするのも良いとは思います。
しかし、これまでのこだわりを保つのであれば、「たとえ紙皿であってもテーマランドやエリア、レストランによってそのデザインを変える事」はできるはず。
また、近年はお土産用の袋も、これまでは季節イベントにデザインでしたが、通年一緒になり、更に両パークで共通のものになりました。

「キャンプ・ウッドチャック・キッチン」オープン当初のオリジナルデザインの紙皿
こちらも「ゴミ袋有料化」のタイミングで切り替わりましたが、こちらも今まで通り、それぞれの季節でデザインを変えたりする事は可能のはずです。
このあたりの対応を見ると、やはり環境への配慮というよりは、コスト削減が目的であることが明確に現れている様な気がします。
ゴミ削減の為に洗浄型食器を使っていた過去
公式サイトに紹介されているように、環境への配慮がまず第一に考えられるのであれば、これまでのように「洗浄型の食器などを使う」と言う方法もあります。
ここで見ていただきたいのは、下記の2017年にオリエンタルランドが公表していた同ページに記載されていた内容の一部。

2017年に掲載されていたデータ(オリエンタルランド公式サイトより引用)
こちらを見ると、ご覧の様にこの紙皿が導入される前は「使い捨てではない陶磁器や金属などの食器を導入し(略)ごみの発生を抑制している」としっかり書かれています。
現在はこれと真逆の行為を「環境のために…」と言っているわけです。
もちろんこうした使い捨てではない食器は、洗浄用機械のメンテナンスや洗剤、水、給排水設備、それらを準備、片付けるキャスト…などを考えると、そこにかかるコストがかなり大きい事はわかります。

レストランオリジナルデザインの食器などはほぼ消滅
ただ、結果的に「コンビニのお弁当のクオリティの紙皿」にして、当然ゴミの廃棄量は増えたはず。
更にそれを「環境保護への代替措置」と言うのであれば、「数値的な比較を示すべき」と言うことにもなってきます。
厳しいことを言うようではありますが、「変えた事で環境への配慮もした」というのであれば、きちんと前後の数値で比較した上で、「紙皿の方が効果的であるという立証」がされなければ、「やはり単なるコスト削減が目的」という事にもなってしまうと言えます。
長年守ってきたイメージを自ら変える行為
もちろん紙皿がだめというわけではありません。
しかし、我々が生活していく中で、「心の潤い」や「拠り所」と言う意味で、日常生活の疲れや癒しを求めてパークに行くゲスト。
そこに過度なそうした「微妙な環境保護」や「明らかなコスト削減」と言った、現実的な部分が前面に出すぎてしまうと、そもそもパークが存在する意義と言うのも変わってきてしまうのではないでしょうか。
もちろん今回の記事で述べたのは、あくまで筆者個人の考え方。何が正解か不正解かと言う答えはないのかもしれません。
ただ、もう少し多角的に見て、他の方法や考え方などで、もっとより良いパークになって行くと良いな、と考えます。
こうした「環境への配慮」と、「パークのこだわり」のバランスについて、皆さんはどのようにお考えでしょうか?